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このエントリイでは、init コンストラクタによるインスタンスの初期化過程について概要解読を行います。
jquery.js のインクルード完了時には、直ぐにコード全体を包含する無名関数が起動され、インスタンスオブジェクトが作成され、その初期化を int() メソッドが担います。
まず該当箇所のコードを抜粋すると以下の通りです。 ( 行数はVer1.3.2による )
24: jQuery = window.jQuery = window.$ = function( selector, context ) {
25: // The jQuery object is actually just the init constructor 'enhanced'
26: return new jQuery.fn.init( selector, context );
27: },
28:
29: // A simple way to check for HTML strings or ID strings
30: // (both of which we optimize for)
31: quickExpr = /^[^<]*(<(.|\s)+>)[^>]*$|^#([\w-]+)$/,
32: // Is it a simple selector
33: isSimple = /^.[^:#\[\.,]*$/;
34:
35: jQuery.fn = jQuery.prototype = {
36: init: function( selector, context ) {
37: // Make sure that a selection was provided$
38: selector = selector || document;
39:
40: // Handle $(DOMElement)
41: if ( selector.nodeType ) {
42: this[0] = selector;
43: this.length = 1;
44: this.context = selector;
45: return this;
46: }
47: // Handle HTML strings
48: if ( typeof selector === "string" ) {
49: // Are we dealing with HTML string or an ID?
50: var match = quickExpr.exec( selector );
51:
52: // Verify a match, and that no context was specified for #id
53: if ( match && (match[1] || !context) ) {
54:
55: // HANDLE: $(html) -> $(array)
56: if ( match[1] )
57: selector = jQuery.clean( [ match[1] ], context );
58:
59: // HANDLE: $("#id")
60: else {
61: var elem = document.getElementById( match[3] );
62:
63: // Handle the case where IE and Opera return items
64: // by name instead of ID
65: if ( elem && elem.id != match[3] )
66: return jQuery().find( selector );
67:
68: // Otherwise, we inject the element directly into the jQuery object
69: var ret = jQuery( elem || [] );
70: ret.context = document;
71: ret.selector = selector;
72: return ret;
73: }
74:
75: // HANDLE: $(expr, [context])
76: // (which is just equivalent to: $(content).find(expr)
77: } else
78: return jQuery( context ).find( selector );
79:
80: // HANDLE: $(function)
81: // Shortcut for document ready
82: } else if ( jQuery.isFunction( selector ) )
83: return jQuery( document ).ready( selector );
84:
85: // Make sure that old selector state is passed along
86: if ( selector.selector && selector.context ) {
87: this.selector = selector.selector;
88: this.context = selector.context;
89: }
90:
91: return this.setArray(jQuery.isArray( selector ) ?
92: selector :
93: jQuery.makeArray(selector));
94: },
95:
96: // Start with an empty selector
97: selector: "",31行で定義されている変数 quickExpr は引数 selector に対する正規表現検索のための文字列で、その意味は次のようになります。
あるいは
のいずれか。
ここに「単語」とは「文字、数字あるいはアンダースコアのいずれかで構成されている文字列」です。なお、部分一致文字列2(何らかの文字か空白文字が1つ以上ある文字列)が以後のコードで呼び出される箇所はまだ「発見」していません。
重要な点なので敢えてここに記します。
RegExp.exec()メソッドは、正規表現による「汎用的で最も強力な」検索メソッド ( 『Javascriptクイックリファランス Javascript1.5対応』pp.112~113参照 )とされていますが、そのように言わしめる理由は部分一致文字列を取得できるからである、と確信します。
jQueryにおける利用法を基にそれを紐解けば、次のようになります。
quickExpr.exec(selector) の結果はローカル変数 match に格納され、この match は exec() メソッドの仕様上配列となります。そして、当該配列には順に次の情報が格納されます。これらの正規表現を駆使した検索によって、"<・・・>" や "#idName"、".className" が抽出されます。
ローカル変数 match 配列に格納される情報 match[0]──/^[^<]*(<(.|\s)+>)[^>]*$|^#(\w+)$/ なる検索に一致した文字列 match[1]──/<(.|\s)+>/ なる検索に一致した文字列 match[2]──/.|\s/ なる検索に一致した文字列 match[3]──/\w+/ なる検索に一致した文字列
さて、35 行以降 530 行まで、延々と jQuery.prototype プロパティの設定が行われますが、jquery.js の全体を包含する無名関数が実行されると、init() メソッドが 26行 から呼び出されます。
呼び出された init() メソッドが最初に行うことは第一引数が与えられているかどうかのチェックです。第一引数があればそれを selector に代入し、なければ document プロパティを selector に代入します(38行)。
ここに引数 selector は jquery.js が読み込まれた時点で 95 行により空文字となっていますので、|| 演算子によって右項が選ばれて document が左辺の selector に代入されます。
続く長いコードは if キーワードによって幾つかの階層に分岐されますが、その構造を視覚化すれば次のようになります。
init() ├(1) selector が DOM Element の場合…………40~46行 │ ex."document","document.myForm.elements","document.anchors[2]" ├(2) selector が文字列型の場合…………47~78行 │ ├(2-1)HTML 形式の場合 ex."<div><p>Hello</p></div>" │ ├(2-2)"#string"の場合 ex."#example1" │ │ ├─(2-2-1)IEかOperaにおいてID名の代わりにnameが返された場合 │ │ └─(2-2-2)その他の一般的な場合 │ └(2-3)正規表現検索文字列 quickExpr に合致しない場合 │ ex."div > p"、"*"、"div, span, p.className"、"#idName > *"、 │ "#idName ~ div"、"label + input"、"tr:first"、":header"、 │ "div:has(p)"、"selector1, selector2, ・・・,selectorN"、 │ "tr:even "、"td:gt(index) "、"div:visible "、・・・・ ├(3) selectorが関数型の場合……………………………………………80~83行 └(4) 最後の処理……………………………………………………………91~93行 それぞれの場合の return 値は以下のようになります。 (1-1) this(インスタンスオブジェクト) (2-1) 指定したHTML要素の配列:selector=jQuery.clean(match[1],context)…44行 (2-2-1) (for IE,Opera Bug):指定した idName 値により検索された要素の配列 jQuery().find(selector)………………………………………………………53行 (2-2-2) document.getElementById( match[3] ) による取得値に context:document と selector:selector プロパティを付加したオブジェクト (2-3) context と selector を入れ替えて jQuery( context ).find( selector ) を実行した結果の配列 (3) selectorが関数オブジェクトの場合:関数実行待機状態にする。 (4) 2-1の場合及び 1~3 の 2-1 以外のいずれにも該当しない場合: 配列 [selector]を返す。
それには本家サイトの API Reference が手っ取り早いでしょう。こちら(API/1.2/Core - jQuery JavaScript Library)に簡単な例示が掲載されています。
init()メソッドの挙動は結構複雑です。次々と jQuery 固有のメソッドが連鎖的に呼び出されて目的が遂行されます。そこで jQuery.js のインクルード時と全体を包含する無名関数の実行により、init()メソッドが最初に起動される迄の過程を追跡し、特に this がどの様に変化するか、返値は何か、に着目してその挙動をまとめてみました。
まず、jQuery.jsがインクルードされ、その後ユーザー指示による jQuery(a,c) 実行によって、インスタンスが生成される迄の動きです。
| タイミング | 前this | 履行行為 | 後this | 返値 |
|---|---|---|---|---|
| include時 | window | 変数設定、prototypeプロパティ設定 | window | なし |
| jQuery(s,c)実行 | window | new演算子によるインスタンス生成とjQuery(s,c)コンストラクタ呼び出し | new jQuery(s,c)によるインスタンス | (1)new jQuery(c).find(s)の結果値
(2)new jQuery(document).ready(s)の結果値
(3)[s] |
上表よりも更に深化させた分析も行ってみました。よろしければ、こちらの Javascript基礎の基礎(1) return 値は「何に」返されるのか?──jQuery解読(16)をご覧ください。 こちら は、表では静的で理解しにくい部分があるため、動きを文章化し、return先迄含めてまとめたものです。(2007/11/27記)
更にインスタンス生成後に行われる初期化過程を追跡してみると、次のようになるはずです。
| 前this | 履行行為 | 後this | 返値 |
|---|---|---|---|
| new jQuery(s,c)によるインスタンス | jQuery().find(s)実行 | jQuery()によるインスタンス | jQuery().find(s)の結果値 |
| new jQuery(s,c)によるインスタンス | document.getElementById(・・)の実行 | インスタンスに左記結果が代入され | それが返値となる |
| new jQuery(s,c)によるインスタンス | new jQuery(c).find(s)による新規インスタンスの生成 | new jQuery(c)による新規インスタンス | jQuery(c).find(s)の結果値 |
| new jQuery(s,c) によるインスタンス | new jQuery(document).ready(s)による新規インスタンスの生成 | new jQuery(document) によるインスタンス | jQuery(document).ready(s)の実行結果値 |
| new jQuery(s,c)によるインスタンス | 配列[s]の生成 | インスタンスへの配列の代入 | その配列 |
一般にthisは、new演算子とコンストラクタから生成されたインスタンスオブジェクトを参照するか、関数を起動したオブジェクトを参照します。ですから、new 演算子によって新たなインスタンスが定義されるその都度 this の参照先は変化します。上表のとおり、thisの参照先はインスタンス作成の度に変化します。またそのインスタンスの挙動の中で起動されたメソッドによって、様々に変化します。
一方、変数 jQuery の参照先は常にコンストラクタ関数オブジェクトのままで、それは固有のクラスプロパティとクラスメソッドを保持し続けます。
ところで、このようなコンストラクタ、インスタンス及び this の振る舞いは、jQuery.js の冒頭部及び jQuery.prototype オブジェクト定義の直後に配置されている、合計6行の次のコードによってもたらされています。
24: jQuery = window.jQuery = window.$ = function( selector, context ) {
25: // The jQuery object is actually just the init constructor 'enhanced'
26: return new jQuery.fn.init( selector, context );
27: },
--------------------------------------------------------
540: // Give the init function the jQuery prototype for later instantiation
541: jQuery.fn.init.prototype = jQuery.fn;
無名関数にコンストラクタの機能を持たせると同時に、そのコンストラクタから生成するインスタンスの初期化機能をも内包させる───こうしたコンストラクタ関数は一般に目にします。しかし、インスタンスの初期化結果をリターンさせると共に、自ら一部ののプロパティの prototype オブジェクトに、自信のプロトタイプオブジェクトを継承させる点、この2点がこのコードの大きな特徴なのではないでしょうか。───僅か6行でこれだけのことを成し遂げているのですから、驚いてしまいます。
まず第一に、第一引数 selector が DOM エレメントであれば、コンストラクタにより生成されたインスタンスオブジェクト( 以下 insObj と表記 )のプロパティにそれを格納させて返値としています。(// Handle $(DOMElement) 40~45行 )
第二に selector が文字列型であれば(上の構成図の(1):コードの48~78行)、それを更に分岐するために上述の正規表現検索 quickExpr.exec(selector) が登場し、正規表現検索文字列 quickExpr の exec() メソッドが文字列 selector に適用されます。(50行)
以下 selector が文字列型だった場合の更なる分岐は次項にまとめます。
他方、selectorの型が文字列でない場合には、関数型であるかどうかチェックされ(上の構成図の(2):コードの80~83行)、関数型であれば有名なコード jQuery(document).ready(function(){ /* Your code here*/ }); が呼び出されます。(83行)
最後に文字列型の一部のケースや以上の条件分岐に掛からない場合においては、 selector を値とする配列が返されます。(91-93行)
さて、selector が文字列型の場合の中身を見てみると次のように分岐されます。
タグ名にヒットした場合には、jQuery.clean (<tagName>,context) によってエラーチェックしてから配列を求め(56~57行)、ID名称にヒットした場合には、jQuery (idName) から該当要素を抽出しています。なお IE 及び Opera のバグ対策が 63~66 行で講じられています。
ここに、HTMLタグ名から配列を求めるコードで使用される jQuery.clean クラスメソッドは、誤表記をチェックして valid な文字列にしています。その名の通り文字列の「清掃」を行うわけです。
この場合には、selector と contextを入れ替えて、jQuery( context ).find( selector ) を実行させています。(75~78行)この処理は、前半の jQuery( context ) によってcontext に該当する注目対象を抽出し、この関数処理が終わった時点で、当初の第一引数であるselectorを引数とする find ( selector ) メソッドが起動し、注目対象から selector 条件に該当する対象を絞り込んでいます。
ここにおいて、1.3.xバージョンから登場した Sizzle が発動されます。2364 行の jQuery.find = Sizzle; により、jQuery クラスメソッド find を起動すると Sizzle 関数オブジェクトが呼び出される仕様になっているからです。
以上見てきたとおり、jQuery は目的とする要素を抽出するために、そのインスタンスメソッドとクラスメソッドを縦横無尽に活用します。そのためコードは難解であり、複雑怪奇です。しかし、その複雑さが解読の興味深さであるとも言えます。
なお、ここで呼び出されている jQuery の各種インスタンスメソッド・クラスメソッド(cleanメソッド、eachメソッド及びfindメソッド)の解読は別の機会に行うことにします。
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